第1章

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 自転車はカギをかけ、三台並べて、草や土の隙間から微かに見えるアスファルトの道の上に置き去りにする。  禍々しい立入禁止の札を見なかったことにして、少しだけ奥へと進んだ。 「やったー!」 「おい、梨花! そっちはダメだって!」 「なにか企んでいるとは思っていたけれども! こらーっ!」 「幸助もなんか気付いたんなら教えてくれよ!」  水遊び道具はバッグに入っていたが、梨花はひとりで冒険を始めた。  俺と幸助は必死になって追いかける。森の奥へとどんどん足を踏み入れていく。  彼女を捕まえられないこの状況を作ってしまった理由としては、スニーカー対サンダルというところだろう。  逃げるその姿が大事に抱えているバッグから見えるサンダルが、ひどく恨めしいものに見える。  どんなに願っても時間は戻らない。けれども悔しさからか、そういうことばかり考えた。
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