第1章

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「おいおい梨花……」 「今日は随分とアクティブだね」 「昨日の夜、お母さんと喧嘩したの!」 「ああ、それで」 「ストレス発散に悪いことしよう、みたいな感じなのかな。だったらいつも通りだ」  肩を落としながらも、慣れてしまったからか悪い気はせず、俺たちは古井戸の横で待ち構えている梨花のところへと急いだ。  別にのんびりしていても怒られはしないものの、女子を待たせる、という行為が本能的に嫌なのだろう。  三人揃えば、彼女は恐る恐るといったふうな手で、古井戸にかかっている板をずらす。  ようやく中が覗きこめるようになったのだが、そうした俺たちが見たのは、猫かなにかの死骸だった。  干乾びた古井戸の底には、動物の死骸と、ロープにつながれた桶、そして枯れ葉や石ころが多く見受けられる。
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