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うつむいた梨花が、震えた声で言う。
「私、しばらく前に捨て猫拾ったの。にか、って名前つけて、お母さんに内緒で、お父さんと一緒に車庫でお世話していて……。でもいつの間にか、どこ探してもいなくてね。逃げちゃったのかも、ってお父さんは言っていたけれど……」
幸助と顔を見合わせる。
俺と同じで、梨花が言おうとしていることを察したのだろう。
『お母さんがこうしたんだ』
それを言わせてはいけない気がして、必死になって口を挟んだ。
気の所為。他人の空似の猫版。見間違い。
けれども彼女は、これがその「にか」である理由をハッキリと告げる。
「その首輪、私の手作りなの。だから世界にひとつしかないよ」
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