(三)

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 観光船の船頭の詰所で出勤の印を付けてから、春江は連絡事項が書かれた白板を確かめた。スマホの落し物の届は出ていないようだ。  彼は昨晩拾ったスマホを一旦は詰所の管理人に預けようとしてバックパックから取り出したが、少し迷ってから、いつも半被の下に着ている黒のダウンジャケットのポケットに押し込んだ。そしてそのまま仕事場へ向かった。  今日は昨日の曇り空が嘘のような快晴になったが、この時期はすっかり木々も落葉して、水郷の風景も閑散としている。
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