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バスを降りて少し歩くと、水の気配を感じた。
船着場までの距離は僅かだった。
湖につながる水郷をめぐる観光用の屋形船が数隻横付けされて水面に影を落としている。
何故、こんな場所で。明生は返す返すも奇妙に思った。
冬のはじめの夕暮れ時、船着場では船頭たちが仕事の終わり支度をしている。振り返って見れば水路をのぞむ景色が墨色に染まり、夕闇に沈もうとしていた。
今日はもう終わりだ。ぼんやりと水路の先を眺めていた明生は、船頭の一人にをかけられた。
「いえ、人を待っているだけなんで」
明生は船着場を見下ろして、両の掌を横に振った。
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