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「人を…?」
船頭の声の抑揚から察するに、明らかに怪訝に思われているようだ。
頭は紐をほどいて被っていた笠を外すと、まじまじと明生を見た。
屋形船の船頭と聞いて想像するよりずっと若い男だ。アルバイトの学生かもしれない。
「哥さん…ええ男やなあ。暗がりで見てもようわかる」
「へ?」
若い船頭は船着場から石段を駆け上がってくると、明生とすれ違いざまひそと囁いた。
「こんな時間に人待ちやなんて。あやかしに捕まらんよう気いつけや」
走り去っていく船頭がダウンジャケットの上から羽織った藍の法被が一瞬風を含み、ふわりと明生の身体を撫ぜた。
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