心を蝕む情愛の輪舞

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昭和中頃のレトロモダンな趣のある喫茶店。近代化した一帯でその店だけが時代の激流に耐え、かつての古きよき時代の香りを残している。 若者達はその時代を知らなくとも、店の静かな佇まいから60年代のノスタルジーを感じ取り、つい足を運んでしまう。私もその一人で、学校帰りによく通っていた。 はじめの頃は店の静けさにとても緊張したものだけど、慣れた今ではこれがとても心地よい。 店主のおじいちゃんも口数は少ないけど物腰柔らかな人で、接しやすい人だ。 みんなはマスターと呼んでいるけど、私は親しみを込めておじいちゃんと呼んでいる。 おじいちゃんはもうじき七十五に手が届く年齢で、一部の常連の顔を忘れかけているけれど料理の腕は老い知らずだ。 でも、年が年なのでさすがに疲れを感じてきているようで、ある日、入口に求人が貼り出されているのを見つけた。 興味はあったけれどバイト未経験の私には手を挙げる勇気が無かった。恥ずかしながら、私は女子だというのに料理の経験がほとんど無い。 一ヶ月過ぎても応募者は無く、おじいちゃんが一人で切り盛りする日が続いていた。 「若い女の子でも雇えることができれば店に華が添えられるのに」 おじいちゃんが常連客の一人とそんな会話をしているのを耳にして私はうんちを漏らして店じゅうにゲロをぶちまけまくって店主に蹴りを入れてまだ作ってる途中のナポリタンが入った熱々のフライパンで何度も殴り、フライパンを降り下ろした際に宙を舞ったナポリタンが禿げた客の頭に赤毛をつくり、私は次々と客どもに噛みつき、スプーンで目玉をくりぬき、そして最後に既に昇天した店主のくそじじいにバイトに応募したいと伝えた。
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