闇堕ちの邪君

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 それまで生い茂っていた山の緑はここ数日で枯れ果てた。  ひとりの騎士が白き愛馬とともに坂道を駆け上がる。彼が目指していたのは、東の果ての島国に佇む黄昏色に染まる王城。戦火を知らぬ神聖なる城塞として地上世界の人々の間でも高名な城。彼は道端に横たわる鎧姿に目もくれず先を急いだ。  世界の存亡をかけた戦争が終わって間もないというのに。騎士は自らの行いを馬上で悔やんでいた。先の戦で、どれだけの人が犠牲になったのか。俺の魔法剣技は大勢の人々を不幸に陥れるものではなかったはず。そもそも、俺にとっての正義とは何だったのか。  聞く限りでは、地上世界に生きる8割以上の人々が白き閃光で消滅した。私が友を助けるためとはいえ、戦争に干渉した結果この世界は滅びかけている。 俺には、友を止められるのか……  騎士は衛兵のいない城門を通り過ぎた。
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