続・もう一度だけ Just one more time（本編完結）

会いたくて会いたくて

「うわっ、ここもか」

今年最後の月を迎え、ショッピング街はどこもクリスマスモードで音楽や光で溢れている。

遅くなった打ち合わせの帰りに馴染みのファミレスで軽く食事でもと思ったのに、駅を降りた途端、まるで今の私の気分にそぐわない華やいだ情景に一気に気分が萎えそうだった。

「ねぇー、ナオ君、やっぱりあの店にしようよぉ」

通りがかりにふりそそいでくる甘い声と甘い香水。

ぶつかりそうになって思わず身をかわしたのにも、あちらさんはまるで気づかない。

思わず振り返って睨んでやると、オフホワイトのカシミヤのマフラーを巻いたその女は隣の彼氏にくっつきすぎていたのか、「きゃっ」　と道路のヘリでつまづいていた。

フンだ。二人で転べばいいんだ。

おっと。いかんいかん。

スペインで撮った写真も含め、ようやく私の企画でひとつ単行本が作れるかもしれないのだ。

落ち込む理由なんかないじゃないか。

しかもその単行本のテーマは　『がんばる大人女子のためのとっておきの癒し読本』。

まあ、まだタイトルは未定だけどね。

というか、今なによりこういうのが必要なのって私なんじゃ……。

いかん!　また思考がネガティブになってきた。