3601人が本棚に入れています
本棚に追加
「いらっしゃいませー」
ドアをあけるとベルが鳴る馴染みのファミレスのレジのところにも、小さなクリスマスツリーがキラキラと灯りをまたたかせていた。
平日の夜遅く。
客はカップルとなぜか一人で来ているおじさんたちばかり。
座っている場所も綺麗に分かれている。
独り身の女(おばさんじゃないからね!) はどこに座れっていうのよ。
こんな時間なのに7割がた埋まっているテーブルの脇をすり抜けると、クリスマス仕様のネールをした女の子が彼氏から私に視線を移した。
― こんな時間にお一人様? かわいそーに。
その視線ときたら言葉なんかよりずっと雄弁に憐れみビームを放ってくる……
なんて思うのは私の僻みだろうか。
何よ。あなたの隣にいる人より、怜のほうが何倍もカッコいいんだからね!
見てくれだけでなくて、楽器も弾けて言葉もいろいろしゃべれて所作もスマートであっちの方も……
……ってやめやめ!
なにくだらないことを張り合っているんだ私は。
唯一空いていた窓際の席に鞄を放り出すように置いた。
最初のコメントを投稿しよう!