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……こういうのをササっと用意しちゃうんだからなあ、この人は。
慣れた手つきでワインのコルクを外す怜の手元を見つめながら、理佐は彼と初めて会ったころのことを思い出していた。
「カルフォルニアの白ワインと言えばシャルドネだけど、甘いから好きじゃない」
怜はそう言ってワインをグラスに注ぐと、理佐に渡して 「Cheers (乾杯)」 と自分のグラスに軽くぶつけてくる。
「ほんと、乾杯だよね」
アンダルシアで共に旅した時も、パリで一緒にいた時も、何度も乾杯したけど、この乾杯は全く意味が違う。
「私たちのこれからに、乾杯」
ちょっと恥ずかし気に、でもはっきりと聞こえた理佐のその言葉に、怜が目を見開いて理佐を見た。
「……そうだな」
そしてソファで隣に座る理佐の肩に腕を回すと、チン、と再びグラスを合わせて鳴らした。
「これからもずっとよろしくな」
理佐は返事する代わりに怜の肩口に頭を埋めるようにもたれかかった。
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