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自分の感情を抑えきれずにキスをしてしまったのはセビリアでだけど、本当はもっと前から気になっていたことは自覚している。
理佐と初めて会ったのは、あの名前も知らないようなスペインの山あいにあったバスの休憩所だった。
祖父の会社を本格的に手伝うのか、このままアートディーラーとして一匹狼のような生き方を続けるのか。迷い続けていた自分は一人になって今後のことを考えようと、休みをとって車でスペインを南下しているところだった。
軽く腹ごしらえでもしようとあの休憩所で車を停め、陽気な旅人たちに誘われるままギターを出して皆の歌声にあわせて弾いてたところに理佐の乗っていたバスがやってきたのだ。
そして理佐たち乗客が降りてきた。
仕草で理佐が日本人だということはすぐに察しがついた。こんな何もないスペインのド田舎で日本人の女の子が一人旅? いったい何の用だろう?
けれどもっと驚いたのは ―――
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