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「んー」
寝づらいのか理佐が少し身じろぎをした。
ソファではちゃんと寝れないし、起こしたほうがいいのか?
怜は理佐の方に体を向けてその顔を覗き込んだ。
「理佐」
起きる気配がない。疲れているのは激務あけで時差もある自分のほうのはずなのに、と怜は少しだけ苦笑した。
「りーさー」
そういえば前にもこんなことがあったな。
あの時は彼女を置いていかなければならなかった。凄く辛かった。けれど今はもう……。
ソファのひじ掛けに無造作に置かれた理佐の手を握ってみる。
胸に微かに感じた痛みに、怜はあらためて自分の想いの深さを思い知った。
― 怜、おまえは、8階の眠り姫を、ちゃんと、起こしてこい
祖父の声が頭の中に蘇る。
理佐に覆いかぶさるようにして、その唇に自分の唇を寄せた。
軽く触れあわせてから、舌で優しくノックするようにして理佐の唇を割った。
「んー」
栄詳で徹夜明けで眠っていた理佐にこっそりとしたキスとは違う。今は起こして、このまま抱き上げて連れ去ることだってできる。
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