アメリカ編: 何度でも

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コミュニティ・ルームとはマンションの住民が子供のお誕生会などパーティのために借りられる広間で最上階にあり、天井から床まである大きな窓が素晴らしい景観を見せてくれるのだった。 大晦日のカウントダウンの時にはロスの周辺あちこちで花火が上がる。それを見ながらシャンパンで乾杯しましょうと管理人から渡されたチラシにに書いてあった。 飲み物のほか食べ物はカナッペ類を事務所が用意するが、各自好きなものやシェアしたいものを持ち込んでくださいとも。 「確かにそれは顔を出したほうがいいかもな。ここに2年は住むんだから、皆と顔見知りになるいいチャンスかも」 二人きりで過ごしたいと言われるかと思いきや、怜はあっさりとと年越しパーティに参加することに同意してくれた。 「パリの時のを思い出すよね、ほら、ニコラスさんのとこでの」 「あれはもうずいぶん前のことのような気がするな」 あの時は、怜のいるパリを去りたくなかったけどまた日本ですぐ会える、そう思っていたんだ。 理佐は手元のチラシから隣に立つ怜に視線を移した。 あれから本当にいろいろなことがあった。嬉しいこともあったけど、辛いこともたくさんあった。 でも今はこうして怜とまた共にいられる。それがどんなに幸せなことか。 視線を上げると、怜もこちらをみて軽く微笑んだ。あなたもいろいろと思い出したのかな。 そんなわけでカウントダウンパーティに顔を出すことになったのだが、理佐は調理器具も一部を残して荷造りしてしまったので、二人で人気の寿司屋に行ってつまめるような巻き寿司を何種類かテイクアウトで買うことにした。 「アメリカ人、スシ大好きだから。これなら間違いないよ」
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