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キュウリやアスパラやアボカドや、色々な野菜がそれぞれ入った巻き寿司を理佐が嬉しそうに次々と注文している。
怜は始め微笑して見ていたが、最後には 「そんなに持っていくのか?」 と呆れ声を出した。
「だってこれおいしそうだし、見てたらおなかすいたし。余計に買って夕飯代わりにしない?」
「でもそのあと数時間後に同じもの食うんだぜ?」
ちっちっ、と理佐が人差し指を横に振る。
「テーブルの上に置いたらあっという間よ? スタジオのパーティでもよくベジタリアン・スシを出すんだけどね、15分もしないうちに全て消えるの」
「そうなのか?」
感心したように怜が言った。アメリカ人の食志向も変わったものだ。
車を停めた駐車場が見えてきた時、怜の目にふと留まるものがあった。
……あれ? 道路の向こうのテラスバーにいるあの人は。
昨日、教会から出て動けなくなるほど疲れ果てていた自分にビニールシートを貸してくれた人じゃないか。あれは返したほうがいいよな。
でもとなりに女性がいる。女性? 確か彼はあの時、理佐の先輩にプロポーズされて……
「怜? 車のドアロック外して」
「え? ああ」
まあいいか。ここに住んでいる人なら、またあとでシートを返すチャンスもあるだろう。
怜はリモートキーでピッ、と車のドアロックを外した。
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