アメリカ編: 何度でも

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「初めて彼と教会で会った時さ、僕たちはまだお互いにたったの5歳だったんだ。彼は父親を亡くしてまだあまり時間がたってなくて、とても不安そうだった」 「うん、その辺の話は聞いたことがある。あなたが声をかけてくれてすごく嬉しかったって」 「ジョセフのママはとても敬虔なクリスチャンなんだ。教師として働いてシングルマザーとして彼を育てているのに、日曜の礼拝には必ず来てたし、教会のバザーなどではいつも活躍してた」 「そうだってね」 「僕らは一緒に地元のサッカーリーグにも入ってたしキャンプにもいったし釣りにもよく出かけだけど……僕は自分の気持ちを伝える気はなかったんだ。あの日までは」 「あの日?」 「大学進学の進路相談の日。11年生(高3)の時だったかな」 「何があったの?」 海の方に視線を投げたマイクが口を開くのをシンディーは待った。 「……ここにいたら僕は自分の気持ちに素直にふるまえない。一緒に違う州の大学に行こう、って」 「(こく)られたんだ」 「まあね」 マイクがチン、と指でグラスを(はじ)く音がした。 「大学の4年間、一緒だったんだよね?」 「うん。その後もね」 マイクは少し恥ずかし気に微笑んだ。
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