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部屋に戻るなり、理佐はぐったりとソファに座り込んだ。
「疲れたか?」
「うん、ちょっとね。あー、でもすごかったよね、花火! もう同時にあちこちで上がって」
「そうだな」
確かにコミュニティ・ルームを囲む窓の外では四方八方で新年を祝う花火が上がり、どちらを見ればいいかわからない状態だった。
「子供の頃は花火って夏のものだと思ってたんだけどなぁ」
「めでたきゃあげる理由はなんでもいいんだろ」
ほら、とキッチンから戻った怜がシュワシュワと泡の上がる金色の液体の入ったグラスを渡してきた。
「え、もうアルコールは無理、」
「アップルサイダーだよ」
「え」
「あらためて、新年おめでとう。今年もよろしく」
怜は隣に座ると、自分のグラスを傾けて理佐を見つめ、微笑んだ。
そんな彼に胸がいっぱいになって、理佐は何も言わずにただ頭を彼の肩にもたれかける。
「一つ聞きたいことというか、相談があるんだけど」
彼の肩に押し付けた耳に大好きな声が響いた。
「何?」
「理佐、日本に帰る飛行機はもう取ってあるのか?」
「え? うん。あ、キャンセルしなきゃいけないね」
怜がこっちに来るというのだから。
「いや、そうじゃなくて。理佐のチケットの日付を変更して、一緒の便で日本に帰ろう」
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