アメリカ編: 何度でも

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家の間取りは出て行った当時とほとんど変わっていなかった。 入ってすぐの廊下の右手に接客用のダイニングルーム、反対には応接室。 奥にはアイランドのある大きなキッチンとファミリー用のダイニングルームがあるはずだ。 大きな窓のある採光のいいキッチンはこの家を建てた時に、父が料理好きのマリアのために一番庭を良く見渡せる位置に配置された。 驚いたことに壁の色などもほとんど変わっていない。あまりの変わっていなさになんだかあの頃に時間が戻ってしまう気がしてきて怜は足を止めた。 ひとつ息を吐くと携帯の画面に目をやる。仕事がらみの緊急なメッセージは入っていなかった。 アメリカでは1月2日からもう仕事が始まる。ロスの事務所を支店にすること、さらに怜が支店長になる話は現地のスタッフから大歓迎された。もともと怜が設立に大きく力を貸した事務所だったので、当然と言えば当然の話なのだが。 『こんな嬉しい話、信じられないねー! 素晴らしい!! 』 はしゃぐ所長の陳さんにそのまま歓迎会という名の飲み会に連れていかれそうになったので、『理佐が待ってるから』 と逃げてきたのはまだ一昨日のことだ。
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