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「怜?」
部屋数がいくつもある海先生の家だが、理佐には彼の行先は見当がついていた。
そのドアの前で立ち止まる。ノックをしようと思うがこぶしを固めたままだ。緊張にめまいがしそうになる。
もしすごく怒っていたらどうしよう。いやむしろもっと困るのは、もし泣いていたら……?
ええい。
ここで立ち止まっていても仕方がない。皆が心配している。
トントン、と小さくドアを叩くと、理佐は中に入った。
昔、彼のものだった部屋の中にはやはり今まで来た時と同じように、机とベッドが置いてあるだけだった。
そして怜はーーー
シーツもかけていないベッドに腰掛けて、こちらに背を向けて窓の外を見つめていた。
理佐が入ってくる気配にも振り向かず、ただ外を凝視していた。
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