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怜は肘を膝についた姿勢のまま、まだ顔を覆っていてこちらを見ようともしない。
「ごめんなさい……」
なんだか本当に泣きたくなってきた。さっきのサプライズパーティだって、このプレゼントについての話だって、怜のためにと思ってしたことが、どうしてこんな風に裏目に出てしまうのだろう。
所詮私には彼の心についた深い傷は理解できていなかったのかもしれない。
私の両親だってたまには夫婦喧嘩もしたけど、おおまかにいってうちは普通の穏やかな家庭だった。そんな自分がこんなにも複雑な家庭環境で育った怜の気持ちに働きかけようだなんて思い上がりだったのかも……。
そう思いながら、理佐はそれでも後ろから抱き寄せるようにおずおずと彼の背中に手を回した。
その手を払いのけられないことに少しだけ安堵して、何も言わずにそのまま彼の方にわずかに身を寄せた。
少しして、怜が片手を顔から外して背中から脇へと回された理佐の手を上から包むように握った。
(怜?)
怒ってないのかな、と理佐が思った時、怜がこちらを向かずに口を開いた。
「……えないか」
「え?」
「ちょっと一人にしてもらえないか」
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