アメリカ編: 何度でも

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母親が深夜に出て行ったあと、なぜすぐに自分らを起こして知らせなかったのかと父にも兄にも責められた。 それから半年もしないころ、家に時々外国人の若い女性がやってくるようになった。マリアという名前のその人は、見た目は近所の女子大生くらいの若さだった。感じのいい人でおやつなども用意してくれるので、初めは新しいお手伝いさんかと思っていた。   けれどある時、夜中に兄の大声で目が覚めた。 「あの人と結婚するって、親父、何考えてんの!? お袋が出て行ってまだ半年もたってないだろっ!?」 それからは兄は自室に閉じこもってほとんど姿を見かけなくなり、一方ではしばしば父が苛ついた声で誰かと電話で話す声が聞こえるようになった。……後から思えば相手は祖父だったのだろうけれど。 家の中ではいつも誰かが苛ついているか怒っている……そんな毎日だった。
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