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『どうしたの?』
『すみません、あの、なんだか……』
『さっきのこと? いいのよ。レイの顔を見られただけでもよかったわ』
マリアさんも先生と同じことを言う。
『それに二人で部屋に入ってきた時のレイだけどね、あなたと一緒にいるあの子の顔が今まで見たこともない表情してて』
『怜が?』
『そうよ。なんというか、穏やかな顔してた。ああ幸せなんだなってわかって嬉しかったわ』
『そうなんですか……』
微笑んでそう言うマリアに理佐は感じ入った。
マリアさん、そんなふうに彼を見ていたんだ。
彼のほんの少しの変化も見逃さない。
……やっぱり、マリアさんは母親だ。
『でもね理佐ちゃん、一つ約束して?』
『はい?』
なんだろう。
『レイはここにはあまり来たくないかもしれないけど、リサちゃんはそんなこと気にしないでこれからも今まで通り遊びに来てね』
『……』
『カイも私も、リサちゃんのことが大好きだから』
英語ゆえのストレートな表現かもしれない。でも理佐はさっきとは違う意味で涙ぐみそうになった。
『ひゃあ~‼』
その時、背にしていたプールの方から大きな叫び声が聞こえた。
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