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アメリカに来てから、海先生の家に何度も呼ばれた。優しいマリア、喧嘩しながらも仲良く遊ぶウィルとジェイたちといる時間は楽しかった。
でも海先生一家や怜の兄の庄司先生一家の団らんぶりを見るたびに、心のどこかが痛んだ。
どうして彼だけが、こうした家族との何気ない楽しいひと時を持てずに生きてきてしまったの。
どうして怜だけが今も一人ぼっちなの。
そう思えてしまったからだ。
『よし! バースデー記念写真を撮るぞ! 理佐ちゃんに頼んでいいかな?』
海先生の声に理佐は急に意識を引き戻された。
『はい、もちろん』
それはあらかじめ承知のうえで機材を持ってきていた。
『え、ちょっと待て、俺、上下こんな格好だよ? 』
怜がびょーんとお腹のあたりのスウェットの生地を伸ばしながら抵抗した。
『いいからいいから』
『だって俺バースデーボーイじゃないの? 主役でしょ? 』
『ねー、じゃあこれ着たら!? 』
ウィルがどこかに走って行って持ってきたのは去年のハロウィーンで彼が着た恐竜の被り物だった。
『……』
『レイ兄ちゃんにはちょっと小さいかなあ』
『そうだな、ありがとう。だけどとりあえずいい。恐竜になるくらいならこのネズミ色のままでいい』
手を振って真顔で断る怜に理佐は思わず噴き出してしまった。
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