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怜はどこにいったんだろう?
マリアから夕飯も食べて行ったらと言われたが、さすがに今日の誕生日イベントの後にそれでは彼女も疲れるだろうと思い遠慮した。
帰り支度をしていたら、気がつくと怜の姿がない。
理佐は廊下の奥に目を凝らした。
怜の部屋のほうから話し声が聞こえる。あれは怜の声? それと、先生……?
「この部屋、出て行った時のままだな」
怜が自分の部屋の中をあらためて見回しながら言った。置いて行った数少ない本の位置まで当時のままだ。
「ああ。マリアがそうしたがったんだ。いつお前が戻ってきてもくつろげるところがあるようにとね」
「……」
「怜、今日はありがとう」
「なんだよ気持ち悪いな。礼を言うのはこっちだろ。理佐の仕事や大学院のことといい、パーティといい」
本棚を見つめる怜の隣には、海が同じように前を向いたまま立っている。
「…………お前がずっと連絡を絶っていた間、どうしてそこまで私たちと関係を断ちたいんだと思ったことが何度もあったよ。でもあの子達を育てるうちに、お前たちの親だったころにこうすればよかった、ああすればよかった、ってそんなことを何度も思ってな」
「……いいよもう。こうして兄貴も俺もそれなりにやっているんだから、それで充分だったってことじゃないの?」
海は小さなため息を漏らすと、そこで初めて怜の方に向き直った。
「お前が理佐ちゃんを見つけてくれてよかった。いや理佐ちゃんがお前を見つけてくれてよかった」
ふっ、と笑ってから肩を竦める怜に、海が先ほどから手にしていた茶色の紙袋を差し出した。
「これ。ずっと渡し損なっていた」
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