アメリカ編: 何度でも

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その時理佐はふと、以前、怜の兄の庄司先生や秘書の水島さんから聞いたことを思い出した。 ――― 怜は特におじいちゃん子で、母親が託児所がわりに僕らを会社に置いていくと、彼はいつも絵を描いては得意げに祖父に見せていましたから ――― 小さいころね、彼はよくあの10階の絨毯敷きの廊下に大きなスケッチブックを拡げて絵を描いていました。当時から上手かったですよ この数々の絵は、もしかしてそのころの……。 理佐はスケッチブックを閉じると、ぎゅっと両腕で抱きしめた。 「何やってんの」 「小さい頃の怜が一生懸命描いてた絵なんだもん、なんかこう、ね」 愛おしくて、というのはちょっと照れくさくて言えない。
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