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「これ、大事に大事に取っておこうねー」
「いいよそんな昔のもん、別に取っておかなくったって」
「と、絵も描いてくれなくなった今の怜兄ちゃんが言ってますが無視無視」
「おい」
呆れた声が聞こえてきたが理佐は動じない。
「そうだ、怜、お願いがある」
「何?」
「日本からまたロスに戻ってきた後、私たちのマンションに飾る絵を描いて」
「はあ?」
「毎日怜の絵を見て過ごしたいの。簡単なデッサンみたいのでもいいから、なんか描いて。アンダルシアを一緒に旅してた時は描いてたじゃない」
「あの時は時間があったから……」
「簡単なのでいいから。週末にでも描いて? お、ね、が、い!」
「……わかったよ」
やった、と理佐は小さくガッツポーズをした。絵を飾りたいのはもちろんだったが、絵を描く彼をまた間近に見られる。それはなんと嬉しいことなんだろう、と言ったあとに自分自身でも気づいたのだ。
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