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「母親は縫物が苦手だったんだよ」
「えっ、うそっ、これ、怜のお母さんが作ったの!? 」
怜はシマッタ、という顔をして肩を竦めた。
「こういうのちゃんと作ってくれる人だったんだ……」
「まあ、あの人にしては珍しいというか」
だからなおさら、小さかった怜はきっと大切にしてたんだ。
縫物が苦手だったのなら、きっと苦労して幼い怜に作ってあげて、怜もきっと大事に大事にしてたからこんなくたびれたアヒルになってしまったんだ……。
理佐はぬいぐるみのお腹をやさしくなでた。
「この子の名前は?」
「忘れた」
「こんなに大切にしてたお友達の名前、忘れるわけないでしょ。教えてよ」
「……」
「怜~~」
「……ぺーちゃん」
「ぺーちゃん!! 」
元・凄腕アートディーラーで現・大手総合出版社を率いる副社長。
その彼がアヒルのぬいぐるみに名付けた愛称がぺーちゃん!
「笑うなよ。だから言いたくなかったんだ」
「違う違う、可愛いって、ぴったりだって、そう思ったの!」
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