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「もう古いし捨てていいから」
じーっとアヒルを見つめている理佐に怜が戸惑いながらも言った。
「怜ちゃん」
理佐が突然声色を変えて、アヒルの顔を怜の方に向けながら呼びかけた。
「ぼく、ずっとずっと怜ちゃんに会いたかった」
「おい」
「ずっとずっと、いつかまた会えるって信じていたんだ」
「何やってんの」
理佐が手にしているアヒルの顔がじーっと怜を見つめている。
「また怜ちゃんに会えて嬉しい! 」
「よせよ」
「お互い海のあっちとこっちに離れてしまって、会えない時はとても辛かったけど」
「よせってば」
「でも僕たちずっと、ほんとにずっと、頑張ったよね!」
「…………」
「だからすごく嬉しいよ、こうやってまた会えたんだもん!」
ひゃっ、と理佐が声にならない小さい悲鳴を上げた。
怜がグイっと理佐の上半身を引き寄せたからだ。理佐はかなり無理な姿勢で顔を怜の胸に押しつけられてしまった。
「…………」
(……怜?)
自分の頭の上のすぐに怜の顎があるので表情は見えないが、彼が唇を噛みしめるようにして引き結んだのがわかった。
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