アメリカ編: 何度でも

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『あの、その写真送ってもらっていいですか?』 理佐が遠慮がちに聞くと、ニコラスは 『もちろん! 今ちょうど君にも送ったとこだ』 と快活な笑顔で応じた。 うわーーーっ!! メッセージについた添付写真を拡大して理佐はのけぞりそうになった。 ただでさえ写真嫌いの怜とのツーショットなどほとんど持っていない。アンダルシアの海沿いで通りすがりの人に撮ってもらった1枚の写真をずっと大切にしてきたくらいだ。日本に戻って連絡が途絶えた時、あの写真があったからスペインとフランスでの彼との日々は夢じゃなかった、必ずまた彼に会うんだと心の支えにしてきたのだ。 でもこの写真の二人は。 見てて恥ずかしくなりそうなくらい、1ミリの隙間もなくぴったりとくっついている。 「うわ、すげ」 脇から理佐の携帯を覗き込んだ怜が、理佐の心の中の叫びをそのまま言葉にした。 るるるる~ その時、シャンソンのような音楽が鳴った。 テーブルの上に置いてあったニコラスの携帯の待ち受けの音楽だった。置いたまま彼が受信をタップした。 『Hola、ニコラス先生、お久しぶりです! この写真、どうしたんですかっ、いつ撮ったんですか!? 』 誰だろう。 なんだか聞いたことがあるような声だけど……と理佐は思った。
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