アメリカ編: 何度でも

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また固まってしまった理佐に、「でもまあ、現実問題としてはその前にちゃんと理佐のご両親に挨拶はしたほうがいいだろうし、それに」 と言いかけた怜は理佐の頬を人差し指ですうっと撫でた。 「それに理佐はやっぱり綺麗なドレス着て式だってちゃんとやりたいんじゃないのか」 そこまで言って怜はいつか水島から渡された冊子を思いだした。あの時は当分使うこともないと思って捨ててしまったのだけれど。 怜の指で触れられ、さらに彼の言葉で頬が燃えるように熱くなってしまった理佐は言葉を失っていたが、ふと目の前にいるはずのニコラスの存在を思い出して慌てて顔をあげた。 ひぃぃぃ、ニコラスさんがなんて思って…………あれ? いない。   「ニコラスなら店の中に入っていったよ。新しいワインボトルを頼みにいったんじゃないか?」 そ、そうなの? 「もう勝手にやってくれって顔だった」 そう言うと怜は笑い出した。 「い、いいの?」 「俺と彼の仲だから。それに、」 もう写真を撮られるわけでもないのに、怜は再び理佐の方に身を寄せると膝の上に置かれていた彼女の手をぎゅ、と握った。 「俺たちのことはニコラスが一番喜んでくれているんだ」
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