アメリカ編: 何度でも

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*** 年末年始の移動も納まったころなのか、ロスの空港はわりとすいていた。 『じゃ、私共はこちらで失礼させていただきます』 理佐と怜が飛行機会社のカウンターでチェックインし終えるのを待って、陳は日本風に深いお辞儀をした。 『お気をつけていってらっしゃいませ。よい滞在になるよう祈っております。お帰りをお待ちしております』 『あの、いろいろとありがとうございました』 理佐も同じくらい深く頭を下げた。 何が入ったらこんなに重くなるんだと怜に呆れられた理佐の大荷物は、マンションからここまでほとんど陳と彼の部下が運んでくれた。 『いえいえ、とんでもございません。リサさん、こちらのことで何か気になるようなことがあればどうぞご遠慮なく、いつでもなんでもお申しつけください』 まだ永嶺ではないと言ったら、陳は理佐をさん付けで呼ぶようになった。 『また、向こうに着いたら連絡入れます』 『はい、よろしくお願いいたします。本社の皆様にもよろしくお伝えください』 何度もこちらに向かってお辞儀する二人の背中を見送ると、怜は 「手荷物検査の前になんか食べるか? 」 と聞いてきた。 「まだお腹空いてないから、ゲートに向かってからでいいよ」 「そうだな。LAX (ロサンゼルス国際空港) はターミナルに行った方が店も多いからな」 視線は発着便の電光掲示板に向けたまま、怜の指が理佐の指を素早く絡めとる。理佐は慌てて振り返った。 よかった、陳さんたちはもう角を曲がって行ってしまった後だ。 「なに?」 「な、なんでもない」 もう、なんで私の方が焦っているのよ。
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