アメリカ編: 何度でも

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アメリカの空港はどこもまずパスポートを確認してから機内持ち込みの荷物を検査のための台に乗せる。 なのでそのために並ぶ列の手前で、見送りの人とは別れなければならない。 「なんか変な感じ」 「何が?」 「怜と一緒に手荷物検査をするのが」 そうなのだ。 マドリード、パリ、成田、ロス。 怜と出会ってから何度も空港に来た。 時には彼を想って一人で。 時には彼に見送られて。 時には彼を見送りに。 怜を好きになってから、空港は理佐にとって辛い別れの場所だった。 そこから先は、怜と遠く、本当に遠く、離れなければならないことがわかっていたからだ。 手荷物検査待ちの列に並び中に入れば、愛しい人に触れることはもうできない。 それは怜にとっても同じだった。 ニコラスと仕事で世界中を飛び回っていたころはただの通過点に過ぎなかった空港が、理佐を愛してからは何度も心を引き裂かれるような場所になってしまった。 特にパリと成田で理佐を見送った後の自分の打ちのめされた様子なんてとても理佐には見せられたものではなかった。
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