アメリカ編: 何度でも

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だけど今は。 こうして理佐の手を取って、ターミナルまで、出発ゲートまで、機内まで、そして目的地にまで、共に歩いていける。共に過ごしていられる。 それがどんなに嬉しいことか。 数々の苦しい思いをした空港にいるからこそ、そのありがたさが奇跡のようにすら思われる。 「ホントにそうだな」 「ん?」 少し間をあけて返ってきた返事に理佐が不思議そうな顔をすると、怜は理佐の左手を握ったまま持ち上げてそのこぶしにキスをした。 「どうしたの?」 理佐がくすぐったそうに笑う。 「手に(ロック)をかけた」 「え?」 「もう2度と空港(ここ)でこの手を離さなくてすむように」 「えええっ? 」 ははは、と怜は軽く笑うと、「さ、行こうか」 と理佐を促した。 「うん! 一緒に行こ! 」 笑顔で返した理佐の手を怜はさらに強く握りしめるのだった。 ――― 完 ――――
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