番外編 (日本にて): あの人の急襲

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「がーん」 怜と共に日本に帰国してまだ翌日のこと。 彼の高級マンションのダイニングルームの真ん中で私は途方に暮れていた。 なんとここ、テーブルがない! もちろん椅子もない。全くない。 広々としたスペースには何も置いてなかった。 5年前、アメリカに発つ直前に怜のために色々食事を作っていた時はどうだったっけ? キッチンがけっこう広くて、材料や料理を置くには苦労しなかったので気にならなかったのかな。食べたのはソファのそばにあるローテーブルでだったし。 これから先1か月(もっとかもしれないが)、テーブルなくてどうするのよ、床に座ってピクニックしろとでも!? 「そんなん、理佐の好きなダイニングセット買ってくればいいだろ」 怜があっさりと解決案を出した。 「たった1か月かそこらのために?」 「前にも言ったろうが。また戻ってきた時必要になるから。どうせ買うならいいモノ買って」 そう言って怜は私に何かを手渡した。 「キャッシュカード?」 「俺のだけど、暗証番号があれば金は下ろせるだろう。理佐をクレカの家族会員にはまだできないし、それで買ってくれよ。暗証番号は08XX」 「待って、どこかに書き留めるから」 「なんだよ、覚えてないのか?」 「だって今聞いたばかりだよ?」 「……」 なんだか怜が不服そうだ。
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