番外編 (日本にて): あの人の急襲

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*** 「えっ、お母さん、俺の存在知らないの!? 」 帰宅するなり右手でネクタイを緩めながら左手で私の肩を引き寄せようとした怜がそのままの姿勢で固まった。 「いや、あの、お付き合いしてる人がいるとは言ったことがある、ような、気がするのだけど……」 「………………」 なにせ大学入学と共に広島を出て以来、年に一度帰省するかしないかだった。就職も母の兄である伯父のつてで栄詳に決まったことで二人とも安心してたし、もともと趣味人である両親はありがたいことに子供にはあまり干渉しないたちなのだ。 30間近になったころだったか、 「結婚はどうするの? まあ結婚だけが人生でもないしね」 と母には言われたが特に追及もされなかった。さすがにロスに行くと伝えた時は 「本気か?」 と驚かれたが、意外にも美術教師である父が私の写真の夢を支持してくれた。 で、だ。 怜とのことはごく最近まで、いつ一緒になれるのかわからないような関係だったし、そういう人がいると言ったら言ったでいろいろ聞かれるのも面倒なので詳しくは言わないでいたら―――
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