番外編 (日本にて): あの人の急襲

12/110
前へ
/1588ページ
次へ
*** 「あれ、なんだか人が並んでいるね」 帝国ホテルを出て宝塚劇場の前まで来ると、かなりの数の女性がきちっと並んで立っていた。 「あれは午前中の公演の入り待ちの人たちよ。生徒さんを待っているの」 「生徒さん?」 「タカラジェンヌのことよ。元々宝塚音楽学校の卒業生だからね」 「そうなんだ」 「ここで遠巻きに見てれば生徒さんが通るのが見られるわ。ちょっといい?」 *** 「おなかすいたー」 結局あの場に1時間近く立って見守ってしまった。 「ごめんなさいねー。でも生で生徒さんを見られるなんて滅多にないから」 母はまだ興奮気味だ。 「お母さんもああやって中に入って座ったり立ったりして待つこともあるの?」 あの規律の取れた立ち居振る舞いはたいしたものだ。 「ないわ。ファンクラブに入らないとならないし。でも美穂子さんはもっと若かったころは熱心に応援している生徒さんがいたから千葉から通ってたのではないかしら」 へぇ、推しの世界も大変なんだなあ。
/1588ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3601人が本棚に入れています
本棚に追加