番外編 (日本にて): あの人の急襲

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ホテルからそう遠くない日比谷公園に面したカフェの窓際の席に腰を下ろす。ここも怜のお勧めだ。 大きな窓を通して冬の柔らかな日差しがテーブルの脚元まで差しこんでいた。 「おいしそうなサンドイッチね。夕方から観劇だし、お昼はこれくらいで軽くしとくわ」 母がメニューをテーブルに置くと、すぐにウェイトレスのお嬢さんが注文を取りに来た。 「それにしてもいい眺めね、ここ。冬枯れの日比谷公園も素敵だわ。それにさすが東京ね、道行く人が皆お洒落」 うーん、今日は土曜日だし、このあたりを歩いている人は東京出身じゃない人のほうが多いんじゃないかと思うんだけど……。 週末だからか、窓の外を歩く人たちは二人連れが多い。 そう言えば帰国してからまだ一度も怜とこんな風にデートっぽく二人で東京を歩いたことがないなあ。あの人忙しすぎるんだよね。 「あのコートなんて高そう。イギリスの映画に出てきそうね。あ、あの女性のマフラーの巻き方は素敵」 母は通行人ウォッチングに忙しい。 「あの茶色いブーツの子の髪型、可愛いわ。あなたもああいうのにしてみたら?」 「私に似合う気がしないよ」 あの子どうみても10代後半か20代前半じゃないの。
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