番外編 (日本にて): あの人の急襲

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店の中を見渡していた彼は私の姿を見つけると軽く笑みを浮かべた。 このカフェは入り口付近ではケーキも売っていて、注文を待つ女の子達が彼を見て何やら耳打ちしながら話している。 私たちは入り口から一番奥の方に座ったので彼は店の中を斜めに突っ切らないとならなかったのだが、誰かが座っているテーブルの傍を通るたびに女の子(か大人女子)がその姿を目で追った。 「ちょっ、ちょっとあの人、私たちの方に向かってきてない!? 」 母が焦っている。 「……理佐! 」 声が届く範囲まで来ると怜が呼びかけてきた。 「どうしてここがわかったの? 仕事は? 」 土曜日だけど仕事があると言って彼は朝から出て行ったのだ。 「会議早く終わったから。ここでお昼にするかもって言ってただろ? まだいるんじゃないかと思って寄ってみた」 怜から視線を戻すと、母があんぐりと口を開けて怜を見つめたまま固まっていた。 「お母さん、」 「り、理佐……」 その顔のまま私の方を向く。 「すみません、突然来てしまいまして」 コートを脱ぎながら椅子を引いて怜が私の隣に座った。
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