番外編 (日本にて): あの人の急襲

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そのあと怜の携帯に電話がかかってきてしまい(しかも英語で!)、怜が店の外に出て話している間に私たちはランチを手早くすませた。 元の計画は早めにランチにをすませてから、母は公演時間までホテルの部屋で休むはずだったのだ。その時に怜のことも説明するつもりでいた。なのに……。 「出版社の中って一度入ってみたかったのよ~! 」 と妙にハイテンションな人がここに一人。 「土曜日で人いないし、本と紙とパソコンだけで別に変った機材があるわけでもないし、そんな面白いモノが見れるような場所ではないよ?」 「そうかしら」 「それにこのあと公演があるし、サッと編集部を見てホテルに戻るよ?」 「はいはい」 3人ならこのほうがいいと怜がタクシーを拾い、道が混んでいなかったこともあってあっという間に栄詳の裏受けについた。土曜なので表玄関は閉まっているのだ。 懐かしい。5年ぶりだ。ここで本当に色々なことがあったな。 離れたころと変わらぬ建物を見上げて感慨深く立ち止まる。 「副社長、どちらに行ってらしたんですか。お車をお回ししましたのに! 」  裏受付の担当の藤川さんが中から飛び出してきた。 「あれ? 本郷さん!? お久しぶり! 」 「こんにちは! お元気そうで~」 藤川さんにはいろいろと助けてもらったなあ。 母はと言えば、まだビルの外に立って携帯で写真を撮っている。栄詳のヒット作品のキャラが壁面にいろいろと描かれているからだ。 「お母さん?」 「あ、はいはい」 藤川さんが用意してくれた入館証を渡すと、細い通路の先の方で怜がエレベーターのドアが閉まらないよう押さえて待っていてくれた。
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