番外編 (日本にて): あの人の急襲

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「栄詳はもともと曾祖父が創立した時は教育関係の本を主に出していたんですよ。その後、読者のニーズの変化を見ながらマンガとか雑誌とか精力的に分野を拡げて総合出版社になっていったんです」 栄詳は今や総合出版社としては最大手の一つとなった。 「だけど2代目の社長が後年になって自分の美術好きが高じて高価な美術書とか専門書とか、製作コストがかかる割に部数が伸びにくいモノに力を入れすぎて経営が傾きそうになったのは、本郷さんはご存知ですよね」 「ええ、だいたいは」 元社員だし。 先生がカラカラと椅子を引っ張ってきて私たちの隣に座った。 「だから僕はがここの改革に乗り出したと聞いた時、きっとそういう儲けになりにくい分野は潰すんだろうなと思っていました。でも違った」 わっ、秀先生ったら怜の話を。でも名前を出さなかったのは意図的なんだろうか。 「彼は “利益は他の分野で出す。だから数は絞る必要があるが意義のあるものは創り続けよう” と」 「まあカッコいい。その方が3代目の現社長さんなんですか? 」 母が興味深そうに聞いてきた。 「いや、まだ彼は副社長、というか実質的には社長代理の立場なんですが」 ひぃぃぃ、何このニアミスみたいな会話。
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