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「そういうわけで」
先生が立ち上がった。誰かが部屋のドアをノックしたのだ。
「会社としては利益を出して社員に給料を払っていかないとならないですから、栄詳はこれからもデジタル媒体も絡めた最新の情報発信のあり方を追求し経営に生かしていくつもりです。でも、」
ドアに近づきながら先生が振り返った。
「一方で出版社として紙媒体である本を創ることはやめません。むしろこれからの編集者は後々まで手元に残しておきたくなるような、そういう本を一冊でもいいから創ることを最終目標にしてほしい」
ドアノブに手をかけながら先生は笑みを浮かべて私の方を見た。
「……と、彼が社長代理として出席した新入社員の入社式で言ってましたよ」
――― 後々まで手元に残したくなるようなものを創ってほしい
怜がそう言ったの……?
その時、秀先生がドアを開けて向こう側に立つ人の姿が見えた。
「入っていいんですか?」
ドアの向こう側から声が聞こえた。
「どうぞ」
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