番外編 (日本にて): あの人の急襲

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……そうじゃない。 彼が醸し出す雰囲気が違うのだ。存在感が違うのだ。 5年前、労使交渉で再会した時だって怜はスーツ姿で運営側のリーダーとして私の目の前に現れた。 あの時だって彼は堂々たるものだった。 でも先程、ゆうに30歳くらいは年上の人たちに囲まれていた怜はまったく引けをとらないどころか、何も知らない人が見てもこの人が中心(リーダー)なのではないかと思わせる存在感を漂わせていた。 別にまわりのオジサンたちが媚びていたとかへつらっていたとかじゃない。怜だって偉ぶった振る舞いをしていたわけでもない。 そうじゃなくて、彼が放つオーラが違うのだ。 この5年のあいだに栄詳の実質トップとして叩かれ揉まれながらも自分のビジョンを捨てず、皆を説得して率いて経営を立て直してきた怜。おそらくそういう経験に基づく自信から来るものなのかもしれない。 こんな彼の側面はたぶん職場というか、この役員フロアにいる彼を見なければ気がつかなかったのかもしれない。
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