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えっ!?
「副社長って……? 」
「あれ? おい、日紗子か? 」
母の声を遮ったのは杖を突きながらも小走りでこちらにやって来た佐久間伯父さんだった。日紗子とは私の母の名前だ。
「兄さん!? あら、もう完全復活したのね、よかったわね! 」
「ああ、おかげさんで。というかお前、こんなところで何してるんだ? 」
「何って、理佐が日本に戻ってきたので元の職場を見せてもらっていたのよ」
「元の職場って、ここは重役専用のフロアだぞ? 」
「だからそうじゃなくて理佐の彼氏さんの……」
そこで母はハッとした顔をした。
「あの、」
眉を寄せて自分を見上げる母に、なぜか少しバツの悪そうな顔をした怜が名刺を取り出して差し出した。
「すみません、先程は名刺を忘れてしまいまして、ちゃんとした自己紹介が遅れました」
名刺に目を落とした母の目がみるみる大きくなった。
「取締役副社長……永嶺 怜……? 」
そして目を大きく見開いたまま怜を見上げた。
「え、ええええええーーーっっっ!!?? 」
今度は母の叫び声が高らかに10階の廊下中に響き渡った。
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