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「なんだお前、母親なのに理佐ちゃんの彼が栄詳の次期社長だって知らなかったのか? 」
「知らないわよ、兄さんは知ってたんなら教えてよ! ……というか、えっ、なに、ちょっと待って、次期社長って、理佐の彼氏さんが!? 」
さらなる驚きによろけそうになった母を水島編集長が支えた。
「そうだよ。傾きかけていた栄詳を立ち直らせた凄腕の立派な男だよ、彼は」
渦中の人である怜の方を見ると、どう口を挟んでいいものか困惑した顔をしている。
「いや、実際はもうすでに社長みたいなもんですよね、現社長がずっと入院中ですし」
そう伯父さんが水を向けると、怜は 「ええ、まあ、そうとも言えなくもないですね」 と微笑しつつ曖昧に受け答えた。
そして 「ほんとにそろそろ向かわれたほうがいいですよ。下に車を回しておきます」 と促した。
「あ、そうだね、行こ、行こ! 」
そう言うと、私は呆然自失で突っ立ったままの母をエレベーターに押し込むようにして1階へと向かったのだった。
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