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あれから怜は夕食前に帰宅したが、食後はずっと書斎に籠って仕事をしている。来月には大学院が始まる私のために、なるべく早くアメリカに行こうと根を詰めているんだ。不満は言えない。
夕食の洗いものをすませ怜にお茶を持って行ったあと、一人ソファに座って自分もお茶を飲みながらテレビをぼうっと見ていると、携帯が振動した。
母だ。時計を見ると夜の9時過ぎ。もうお友達との夕食は終わったのかな。
「もしもし? 」
「あ、理佐? 夜にごめんなさいね。今、いい? 」
「いいよ。もう美穂子さんとのご飯は終わったの? 」
「ええ。あの人も千葉まで帰らないとならないからね。あまり遅くまではいられないわ」
「そっか。楽しかった? ショー、どうだった?」
「よかったわよ! いい席だったので迫力が違ったわ」
その後少し沈黙があった。
「で、明日なんだけど……。永嶺さんにお昼にお会いする前に、理佐と話せる? ホテルで朝ご飯の時にでも」
ちょっとためらうような口調が気になるが、怜に会う前にもっと私から聞いておきたいことがあるのだろう。
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