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「なんで? 私言ったよね、怜は私を大切にしてくれてるって」
「そうだけど……。でもあなた、彼に会ったのは5年前だとも言ってたわよね」
「そうだけど、それが?」
5年間も怜のことを知っているんだ。
「あなたがアメリカに行ったのは確か4年前の夏でしょう? ということは、その大半は日本とアメリカに離れての遠距離だったということね? 」
「そうだけど……」
「その間、どれくらい彼に会えてたの? 」
「それは……3回? でも、回数じゃないよ、密度だよ! 」
言いながらちょっと考え込んでしまった。あの3回の逢瀬は密度が濃かったと言えるんだろうか? 特に最後の時のは。彼はたった1晩で帰ってしまったのだから。
「あなたがアメリカに行くまでは頻繁に会ってたの? 」
「……えっと、それは……」
頻繁とはとても言えない。怜と共に時間を過ごしたのはアンダルシアでの5日間とパリでの10日間、そしてアメリカに発つ前の日本での1晩だけだ。
「理佐、あなた……あの人のことをどれくらいわかってるの? 」
ため息が耳元に届いた。
「確かにあの容姿で次期社長で優しそうでいいことづくめな人のようだから、あなたが惹かれたのもわかるけど。でも結婚は生活を共に長く続けていくことなのよ? 相手の方のこともよくわかってないようなら―――」
「わかってるよ! 私は怜のことをよくわかったうえで好きになったんだし、怜もそうだよ! 怜の外見だとか栄詳の社長になる人だからとか、そんなんで彼を好きになったんじゃない!! 」
私の叫び声にドアがカチャリと開く音がした。
怜の書斎のドアだった。
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