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世の中に会社なんて大小含めれば星の数ほどある。大使夫人とか大統領夫人とかじゃないんだから社長夫人になったって夫に付き添って社交するとかはないだろうし、特別どうだってことは―――
「あの容姿で、次期社長という地位もあって、英語どころかフランス語まで流ちょうに話して、身のこなしも応対もそつがなくて、そんな人お芝居の中にしか存在しないもんだと思っていたわ」
怜を褒めまくっている割には母の眉が下がっている。
「そういう面もあるけど、私が怜に惹かれたのはそういうところじゃない。言ったでしょう? スペイン旅行中に襲われそうになってた私を助けに来てくれた。その日に会ったばかりの私を。そういう人なんだよ」
「さらにヒロインの危機に現れる正義のヒーローでもあったってことね……」
「いやそういう芝居じみた意味ではなくって! 怜はね……」
私は深く息を吸って吐くと、怜とのこれまでについて話し始めた。
怜とスペインで出会ったあと旅行を共にしたこと、パリにいた彼にも会いに行ったこと、アメリカでは彼の父親のスタジオで働いていてご家族とも親しくさせてもらっている事などを。
もちろんこんな短時間で詳細までは話しきれないけれど、私と彼の接点で大切だと思えるところは思いつく限り話した。
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