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「でも、」
しかし母は急に真顔になった。
「あんな素敵な人だからこそ、妻になった人は苦労するんじゃないかしら。その点に関してはやはりまだ心配だわ」
「……なんで? 」
娘が素敵な人と一緒になることのいったいどこが問題なんだろう。むしろよかったねって喜んでくれていいんじゃないの?
納得がいかない顔をしている私を母が見つめている。
「昨日、気がついた? 彼が私たちのいたカフェに入ってきた時」
何をだろう?
「まわりの女性が、ほとんど残らず彼の方を見てたわ」
「それはまあ、けっこう見てくれもカッコいい人だし」
確かにそれは私も気がついた。
「あなた、離れていた4年間の間、不安にならなかったの? あんないかにもモテそうな人をひとりにしておいて」
「それは……」
「彼を誘惑するような人が出てきたらどうしようとか思わなかった? 」
「怜は誘惑に負けるような、そんな人じゃないよ! 」
思わず語気が強くなってしまった。
「そうかもしれない。でも、その確信はどこから来るの? ほとんど一緒にいなかったんでしょう? 」
そんなこと言われたって……。
「あの外見で、やり手でもある。あれだけの人に……」
母はそこで言いよどんだ。でもその次に言おうとしたことがわかってしまった。
ーーー この4年間、本当に何もなかったと思っているの?
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