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翌日、母の飛行機の時間の関係もあり怜が11時半と早めなランチに指定した店は、都会の真ん中にあるのに可愛らしい庭園のあるフレンチビストロの店だった。迷うといけないと思い早めに出たら20分も前に着いてしまった。
「いらっしゃいませー」
オレンジや紫など鮮やかな色で咲き乱れる冬の花、パンジーに水をやっていた店員が私の姿を目にとめて会釈する。
「永嶺で予約している者ですが」
「あ、はい。お連れ様はもうお着きになっています」
母がもう着いているんだ。えらく早いな。怜からは朝打ち合わせがあるので少し遅れるかもしれないから先に前菜から始めていてと言われていた。
こじんまりした店の中は手前にテーブル席、奥に仕切りのあるブース席があり、その一番奥に通された。ちょっと個室っぽい作りだ。これなら落ちついて話もできるだろう。
「理佐」 母が私を見つけて手を振った。
「早いね」
「久しぶりの東京だから、散歩がてらに早く出たら迷わずについてしまったのよ。素敵なお店ねえ。なんだかヨーロッパにいるみたいだわ」
冬なのに花に溢れている庭とは対照的に、濃淡のある飴色のインテリアで統一された店内は年月を感じさせるような落ち着いた雰囲気だった。確かにこんな感じのカフェがパリにあったなあと懐かしく思い出す。
「怜、ちょっと仕事で遅れるって。先に前菜でも食べてて、って」
「日曜なのに? やはりお仕事が大変なのね……」
席についてメニューを開いた時、人の近寄る気配がした。
「こんにちは。本郷さんでいらっしゃいますよね? 今日はよく来てくださいました」
アイロンの効いた白い調理服を着こなした男性が私たちに笑顔を向けていた。
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