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「僕はこの店のオーナー兼シェフで西方敬之と言います。永嶺君とは小学校の同級生なんですよ」
ええっ、怜が子供だった頃の友だち? しかも日本にいた頃の!?
「ということは……」
「はい、彼がアメリカに行ってしまうまで仲良くさせていただきました」
母が私の方を見た。怜の生い立ちについてはほとんど話してなかったのだ。
「じゃ怜が戻ってきて30年ぶりくらいの再会ってことですか!? 」
「いや、実は僕は20代のころ調理師の見習いとしてパリのレストランで修行してた時期がありましてね」
「あら、じゃあここのお料理は本場仕込みなんですね! 」
母が嬉しそうに会話に入ってきた。
「そう思っていただけると光栄です。でも当時はまだペーペーの新米でしたからね。そのレストランのオーナーシェフはちょっと気難しい人で、腕は確かなんですが、店の内装とかかなり古びてきていたのに改装とかイメチェンとかには耳を傾けようともしない頑固おやじでした」
「伝統あるところは難しいですよね」 母が相槌を打った。
「さすがに客足も全盛期に比べたら半分くらいまで落ちこんでしまったらしくて、これはまずいと言うことになって店舗改装の専門家が店を何度か見に来て、ある時その人についてきたのが……」
まさか。
「永嶺君だったんですよ」
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